賢者のワイン

2023/11/11 16:45



1989年に初版が出て、2008年と記載のある手許の実物には13版とありますから、ロングセラーです。

 

≪とかくこれまで「発酵」というと、酒やチーズの製造といったごく限られた範囲でとらえられてきたが、本書のねらいとするところは、もっと大きな視点からこれを見つめることにある。≫

と「はじめに」で宣言するとおり、本文はまづ「地球の誕生」から始まります。美食家としてのイメージの強い小泉先生としては、意外な領域からの語り始めです。

 

それも、荒唐無稽な話を強引に関連付けようとするものではなく、学術研究者の正当なプロトコルに準拠して、ひとつひとつの記述に原典、根拠、化学式などが明記されていきます。

 

こうして、だんだんと食品や飲料の発酵の話になっていくのですが、我々の身近な素材のみならず、イヌイットから中国、インド、アフリカ各地の発酵技法に話が及びます。

 

それは食品だけにとどまらず、藍染、革の「なめし」、火薬の製造なども発酵というそうです。

 

まさに縦横無尽、神出鬼没な話題を、「発酵」というただ一点で次々展開していくのですが、日経新聞の料理コラムで馴染みのとおり、読みやすく読者を引き込む筆致のおかげでストレスなく読了できてしまいます。

 

その結果、「あとがき」で著者がいうように、「微細な生物の巨大な力で行われる神秘性」の一端に感心することができます。


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